2005年08月01日

お月様とお日様と雷様

むがあし、むがあし、

  お月様とお天道様と雷様と三人で、旅さ出たんだど。

ほうして、ある宿屋さ泊まったんだそうだ。
  次の朝、雷様が目覚ましたら、空に雲が出ったたんだっけど。
雷様は女中よばって、聞いだっけど。
「なんだが雨降るみでだげど、お月様どお天道様は、何してござんなんべなぁ」
  女中はびっくりして、
「あの、お月様は今朝まだまだ暗いうぢに、宿をたってござったぜっし」
「お天道様は、夜明けど共に出がげなさったぜっし」
って言ったけど。
「お二人とも早いもんだなぁ、月日の経つのは早い、って昔がらいうもんだげど本当だなぁ」
って感心していだっけど。
ほうして、女中は雷様さ聞いだど。
「雷様雷様、雷様は何時にお立ちになんなやっし、もう夕方になんなだげど」
って言ったら、
「俺らぁ、夕立ちだぁ」
って言ったど。
おもしぇごど語るもんだなぁ。
とーびんと。
山形弁訳
  むかしむかし、
  お月様とお天道様と雷様と三人で旅に出たんだと。
そして、ある宿屋に泊まったそうな。
  次の朝、雷様が目覚ましたら、空に雲が出ていたんだと。
雷様は女中を呼んで、聞いたんだと。
「なんだか雨が降るみたいだけど、お月様とお天道様は、どうしてらっしゃるんだろうなぁ」
  女中はびっくりして、
「あの、お月様は今朝まだまだ暗いうちに、宿をたっていかれましたよ」
「お天道様は、夜明けと共にでかけなさいました」
って言ったんだと。
「お二人とも早いもんだなぁ、月日の経つのは早い、って昔からいうものだけど本当だなぁ」
って感心していたっけど。
そして、女中は雷様に聞いたんだと。
「雷様雷様、雷様はいつお立ちになられるんですか、もう夕方になるんですけど」
って言ったら、
「俺は、夕立ちだぁ」
って言ったんだと。
面白いこと言うもんだなぁ。
とーびんと。